機関紙 ひと・まちNo .28

介護予防・自立支援に関する高齢者実態調査
自治体調査と地域包括支援センターヒアリング調査から見えてきたこと

介護予防サービスは使いやすいか


 2006年から新しく「介護予防サービス」が介護保険に導入された。東京・生活クラブ運動グループとひと・まち社は共同で3年間の「介護予防・自立支援に関する高齢者実態調査」に取り組み、このたび2009年度の分析・提言活動に向けて調査内容を冊子にまとめた。都内全自治体(23区26市1町)に行ったアンケートの回答と、58地域包括支援センターへのヒアリング結果から、「介護予防サービスは使い難い」と思われる内容が浮かび上がっている。

 その1つが、新設された区分である要支援1・2への介護予防サービスの内容である。本調査の回答者の93%が75歳以上の後期高齢者であるが、「介護保険ではサービスが足りないので、自費の家事援助を利用している」、「電球の取替えや庭の手入れができない」、「外出の足がない」、「重いものやかさばるものの買物が出来ない」「通院に付き添ってほしい」など、毎日の生活を支える手助けが必要であることを多くが記述している。制度は、「介護」を必要としない利用者にはサービスが少なく、その状況を維持することが介護予防サービスの目標となっている。介護保険は、不安を持ちながらも何とか介護なしで生活している独居の高齢者や高齢世帯、日中独居の高齢者そのどれにも対応するサービス体系になっていないために要支援1・2の利用率は5〜6割程度と低くなっている。

 2つ目は、介護保険の対象者に該当しないが、何らかの介護予防が必要と判定された特定高齢者への6つのサービスメニューである。運動器機能向上、口腔ケア、栄養指導、閉じこもり予防、認知症予防、うつ予防がその項目である。どのメニューも健康維持に必要であるが、食事会、散歩の見守り、おしゃべり会、通院付き添いなどに加え、家事への支援も必要である。日常の生活がうまく回り、自立できて、出かけられるという生活を確保することが介護予防になるのではないだろうか。

 3つ目は自治体の介護予防予算の使い方である。介護保険は自治体が保険者として、サービスに見合った保険料を設定することができる。介護保険特別会計のうち、介護予防に関する2007年度の予算に対する決算を比較すると、回答のあった35自治体のうち26自治体が予算を使い切っていない。また、自治体独自の介護予防に関する項目や介護保険に区市町村特別給付金を設けている自治体はあわせて5自治体だけだった。
 自治体にとって介護予防は、市民が自分のまちで暮らし続けるための独自のサービスを工夫できる政策分野ではないだろうか。


 
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